アジアを拠点に活躍するJANET LAU先生
Special Interview
アジア・香港が誇る陰ヨガ指導者JANET LAU先生。先生にとってのヨガとは何かや、マインドフルネスなどに関してお話してくれています。これを読んだら人生のヒントが見つかるかもしれません。
Q.1 ご自身の紹介をお願いします。
こんにちは。ジャネット と申します。香港を拠点に、執筆家、マインドフルネス講師、シニアヨガ講師、また大学客員講師として活動しています。プライベートでは、1歳になる男の子の母親です。
Q.2どんな方を対象にお仕事をしていますか?
自分自身についてもっとよく知りたい、調和のある人生を送りたいと考える人です。著書「Living with Yoga & Mindfulness」(仮題:ヨガとマインドフルネスのある暮らし)と「The Light and Darkness of Life」で、19年間という年月、軽度の鬱に悩まされていたことに触れたので、生徒のなかには私と同じように感情面の課題を克服し、幸せを実感したいと願っている方が多くいます。全くの初心者もいれば、ヨガ講師やカウンセラーとして活躍している方もいて、年齢や経験度、職業に関わらず、調和のある人生を願う方が集まるのが私のクラスの特徴だと言えます。
Q.3どんなお仕事をされていますか?
2006年にヨガを教え始めました。そして、2010年からマインドフルネスメディテーションも教えています。ヨガと仏教の智慧を日常に生かすことで人生がより豊かになるというのが、私のティーチングの核となるメッセージです。さまざまな人間関係の上に成り立つ私たちの毎日は、学びと実践によって調和のあるものになります。他人との関係性も大切ですが、もっと自分自身の内側との繋がりを深めていくべきだと思うのです。内側との繋がりが深まっていくと、ありのままの自分を受け入れられるようになります。情熱を仕事に注ぐこともできるし、人生の実りを享受することもできます。
Q.4なぜこの仕事をされているのですか。また、お仕事に対する自信はどこから生まれますか?
バラバラだった家族がひとつになる、傷ついた心が癒される、いつも不安に駆られていた人が自信を取り戻す、迷走していた心が明晰さを取り戻す、崩壊寸前だった夫婦関係が再び愛を見つけるなど、生徒が恐れを克服し、夢や実現させるのを見てきました。そうした経験値から現在のティーチングを続けています。自分らしく生きる生徒の姿が、私の原動力なのです。
Q.5マインドフルネスについて教えてください。
マインドフルネスは、ブッダの教えの核となる8つの智慧のひとつです。大きく開いた手のひらのようにオープンな態度で、人生にもたらされるものを受容する。マインドフルネスとは、そんな在り方のことです。「快」をもたらす物事は離すまいと手を握りしめるのに、「不快」をともなう物事は払いのけてしまう。本能的な防衛反応だとも言えますが、サバイバルモードで生き続ける必要はあるでしょうか。
マインドフルネスは在り方、心の態度ですから、頭で理解すること以上に、心で育んでいくことが大切です。継続的な実践が必要なのはこのためです。皆さんもマインドフルネスの恩恵について見聞きすることがあると思いますが、マインドフルネスというのは、ブッダが説いたほかの7つの智慧(生きる術)に支えられてこそ、本当の意味で人生を豊かにしてくれます。
またマインドフルネスは、いかなる状況下でも穏やかさを保とうとすることではありません。むしろ、どんな体験が目の前に立ちはだかろうと状況を受け入れること、人間性に歩み寄ることです。抗うことをやめると、穏やかに生きられるようになる。面白いと思いませんか。
Q.6メディテーションについて教えてください。
ひとことにメディテーションといっても、多様なメソッドが存在しますしその効果もさまざまです。私が教えているメディテーションはブッダの教えを基にした2つの実践法です。
①サマタ瞑想
集中を養うサマタ瞑想は、ある対象物に意識を集中し、集中が切れる度に意識を対象物に戻す練習をします。集中力を高め意志を貫き通す力を鍛えれば、本当にしたいことをやり遂げるために力を温存することができます。
②ヴィッパサナー瞑想
内観を育むヴィッパサナー瞑想では、一定の集中力を保ちながら瞑想の対象物について観察します。その過程で万物の法則に気付かされます。つまり、無常と空です。この内観と気づき(たえず進化してゆきます)を通して、心の柔軟性やオープンネスを身につけることができます。
座って行う以外にも、メディテーションは日々の暮らしのなかで実践することができます。集中し、物事を平静な目で見て、内観を育むメディテーションは、ヨガ、散歩、立つ、座る、寝る、聞く、話す、など日々の暮らしでも実践可能なのです。
Q.7メディテーションを始めたのはいつですか?
ブッダの教え、マインドフルネスメディテーションとの出会いは、2009年のことです。高名な禅僧、ティック・ナット・ハン僧から学ぶ幸運に恵まれました。そこから数年間はフランスにあるティック・ナット・ハン僧の僧院「プラムヴィレッジサンガ」に赴いて学んでいましたが、私自身のティーチングが忙しくなったこともあり、日常生活のなかで禅を実践する方向にシフトしていきました。
マインドフルネスとヨガの研究者で著者のフランク・ジュード・ボッコ先生にも教わりました。そして、香港大学の仏教学部で修士号課程を修了し、現在は母校の香港大学の仏教学カウンセリングの修士課程で客員講師を務めています。
Q.8 マインドフルネスとメディテーションが日常でどのように役立っていますか?
結婚生活が救われましたし、長年患っていた鬱の症状が改善しました。困難な状況に対処する「レジリエンス」と「オープンネス」を高めることができました。母になってからも、息子に理想を押し付けるのではなく、子どものあるがままを尊重することに役立っています。なによりも、自分にも他人にもうんと優しくなりました。
(以前は自分に対して本当に厳しかったのです!)
Q.9マインドフルネスとメディテーションを学ぶ利点とは?
人によってそれぞれでしょう。一般的には、集中力の高いマインドへと鍛え、ネガティブな側面に囚われるのではなく、注ぎたいところに情熱を注げるようになることです。心をオープンに保っていれば、人への理解が深まります。理解があるところには許しが生まれます。許しがあるところには愛が芽生えます。愛があるところには癒しがもたらされます。
Q.10心と体のバランスを保ち、健康でいるためのヒントを教えてください。
「完全なバランスは存在しないのだ」と、理解できたことで心が楽になりました。バランスの乱れは、バランスを取ろうともがいた結果であることがほとんどです。もうひとつの鍵は、自分を許すことです。アンバランスでもよいと楽観視できるようになると、バランスを自ずと取り戻すことができます。無理にバランスを取ろうと躍起にならないことが健康の秘訣だと思います。
Q.11日本で教えることについて感想があれば聞かせてください。
日本は精神的にとても豊かな国で、留学生として訪れた高校生の頃からその美しさに心惹かれていました。日本人の謙虚に学ぼうとする姿勢は素晴らしいものです。現代は、誰もが自分らしく生きたいと願いながら、夢を実現させたロールモデルの存在を探し求めているような風潮があります。出会った皆さんから、より軽快に、より自分らしく生きられるようになったと近況報告を受ける度に感動で胸がいっぱいになります。日本でお目にかかれるのを、心から楽しみにしています。
Janet先生ありがとうございました。
合掌
Interview by Haidar Ali
JANET LAU
香港出身。2006年からヨガ指導を始め、ヨガにマインドフルネスを調和させたティーチングに情熱を注いでいる。香港大学で仏教学の修士号課程を修了し、2018年より同大学仏教学客員講師を務める。《ヨガとマインドフルネスのある暮らし》(仮題)の著者で、TEDxに登壇するなどアジア各国の新聞、雑誌、ラジオ、トークショーなどメディア出演も多数。世界的な禅マスターであるティック・ナット・ハン僧のリトリートでヨガ講師を務めた経験を持つ。
公式ページ:www.janet-lau.com
(右上端の日本語をクリックすると日本語訳が読めます)